同僚が結婚することになり、結婚式に呼ばれている人間で打合せをすることになりました。受付、余興、撮影、二次会の予定など、決めることはたくさんあります。仕事の合間を縫っての打合せなのでいつも全員で集まれるわけではなく、いる人間である程度決めていくという感じでした。
その同僚とは入社式で気が合って、それ以来つかず離れずの付き合いをしてきたのだけれど、部署が異動になってからはおしゃべりをすることもなくなっていました。だから正直、結婚式に呼ばれるなんて考えてもいなかった。そんな戸惑いが、私の中にありました。彼女の個人的なことなど何も知らなかったから、結婚相手のこともご両親のことも、打合せの中で少しづつ知っていった、それが本当のところでした。
「でも、彼女は言わば玉の輿だよね。営業のF君と言えば、実家は代々続く造り酒屋だし」彼女と同じ部署にいる女性が呟いていました。「と言っても、酒も最近は大変だよ。昔程飲まなくなったし、飲酒運転は厳しく取り締まるしね」「余興はどうしようか?何かやりたいことある人いる?」訪れた沈黙。「恋チュンでも歌って踊るか!」賛成の声が上がり、会議室を使わせてもらって練習することになりました。
「どうせなら社長始め、会社の全員に参加してもらって動画を撮って繋いでみたら楽しいんじゃない?出席しない人もいるわけだから」「よく上がってる、踊ってみたというやつか。面白そうだけど、動画を編集出来る奴いる?」「そんなの広報に、誰かしらいるだろ」こうなると、話が少しづつ膨らんできます。新郎新婦のご両親や身内の方にも参加してもらおう、私たちで手分けして訪問して話を伺ったり、振り付け見本を踊ろうというところに落ち着きました。そのビデオを流してから、会場で皆で歌って踊る方が盛り上がるだろうと。
私が担当することになったのは、彼女のご両親とご家族。荷が重いというのが本音、でも投げ出すわけにはいきません。撮影担当と日程を打合せの上、ご両親に連絡を入れました。電話に出たお母さんはとても喜んでくれて、踊ることもそれを撮影することも承諾してくれました。名前を聞かれて名乗った時、お母さんが知っていて驚きはしたけれど。「誰も知っている人がいない中、仲良くなれそうなお友達が出来たって、毎日話してくれましたから」お母さんにお礼まで言われて恐縮したけれど、不安だった会社生活が楽しいものに変わっていったのは私だって同じだ。振り付けをちゃんと覚えて、良い動画にしなければ…改めて、そう強く誓った次第です。