学生時代の同級生が結婚するというので、しばらくぶりに会うことになった。大の親友というわけではなかったけれど、つかず離れず付き合っていた友人だ。お相手のこととか馴れ初めとか、散々に聞かされる。最初は反対していた彼女の両親が折れたのは半年間彼がご両親の元を訪ねて頭を下げ続けたからだと聞いた時には、心の底から感心したものだ。

式の準備や細かい日程などはこれから決めるというが、余り大袈裟にせず身内と友人だけの温かい式にしたいそうだ。「お互い仕事があるからそうそう休んでられないし、これからのことにお金を使いたいしね」と何だか超現実的なことを言う。「じゃあ、お色直しとかはやらないの?」うんと頷いて、彼女が言う。「ファッションショーじゃあるまいし、そうそうとっかえひっかえしたくないし。でもドレスは着たいので、白だけ着るけどね」うーん、就職してから彼女は変わったのかもしれない。

「家の親は、もっと華々しくやって欲しかったみたい。ドライアイスの中床がせり上がるとか、花嫁が輿に乗って登場するとか」そりゃあそうだろうな。娘を嫁に出すのに昔も今もないだろうし。「でも最近、私の後輩もシンプル形式で式を挙げたのよ。それを見て、こういうのもいいなぁと思ったんだもの」そうなんだ。「新郎新婦がご両親や会社の方や友人たちに感謝の言葉を述べてね、これからの決意を語ったんだけど、アットホームで心に響く良いお式だった」

じゃあ、日程が決まったら連絡すると言って、彼女は去って行った。颯爽として歩いていく彼女の薄手のコートが舞い上がる。昔はもう少し大人しい感じだったと思うけど、今は自信に満ちて輝いている。自分の考えを臆することなく述べている。それが彼女の未来の旦那様の力なのか、仕事のせいなのかは分からない。でも、充実して幸せなのかは確かだろう。ちょっと羨ましいかな、私は思った。